2021年6月4日金曜日

読み物 春のウサギ

      自分のことはわからない!
 
アミーリアは大学教授の父親と二人暮しです。12歳のアミーリアは春休み
に出かけたいと父親に頼んでみました。けれどあいかわらず娘の気持ちも
願いも父親には届きません。父親に説得してくれる母親はアミーリアが2歳
の時にがんで死んでしまったので、記憶はほとんどありません。そんな二人
暮しの生活に母親のようにこまごまとめんどうみてくれるオブライエンがい
ます。この人はこの物語のなかで重要な働きをします。なんといってもアミ
ーリアの気持ちをちゃんとうけとめてくれる、父娘の間に決してですぎたふ
みこみ方はしない、そして料理が上手、そしてすぐ近くに住んでいて、そし
て・・・ということがたくさんある人です。暖かくこの物語のなかで大きな
存在です。アミーリアの居場所はもうひとつあります。これもすぐ近所にあ
る、陶芸工房で、イルカやいろいろの小さな動物を造ることがアミーリアの
心のささえです。
そこで、アミーリアが少し心を開いている指導員の甥ケイシーに出会います。
ケイシーの両親は離婚寸前です。母親の思いでもしかしたら母親は生きてい
て会いに来てくれるのではないかと妄想をふくらませるアミーリアの近くに
幻のように現れる女の人。その幻と妄想を誰にも話せないアミーリアの心の
襞が切ないほど読み手の心に入ってきます。
35章の短い文は各々額縁にはいった絵のよう、それらが静かに並べられてい
て家族を持ちたいと願うアミーリアと崩壊寸前の両親がなんとか離婚しない
で家族を持ち続けたいと願うケイシー。家族って願うものだろうか?そんな
ことを考えながら読んだ静かな物語でした。作者のヘンクスの絵本しか知ら
なかったので、うれしい新しい本との出会いでした。
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「春のウサギ」
ケヴィン・ヘンクス
原田勝+大澤聡子 訳
小学館 本体1400円+税



       

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